個人の自己破産についての豆知識

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一般の消費者の方が、消費者金融業者からお金を借り入れすぎて、返せなくなったという場面を想定して、債務整理がどうなるかを見ていきましょう。債務整理の方法にはいろいろあり、場合によって様々な手段をとることになるのですが、このストーリーではいろいろな事情はさておいて、一般的な破産手続になじむものとして進めていきます。


消費者金融業者への支払が滞り始めますと、いろいろと催促の手紙や電話が来るでしょう。こういう手紙の中でも、無視をしてはいけないのは「裁判所」からの手紙です。時々悪質な封筒の中には裁判所を騙るものもあるので、「裁判所」からの手紙かどうか判断に迷ったら弁護士に相談してください。裁判所からの手紙には応答する必要がありますが、裁判所以外からの手紙に応答したり、裁判所からの手紙に下手な応答文を書くと、せっかく消えていた(時効消滅)債務が復活してしまうことがあります。手紙に応答する前に、それが「裁判所」からのものであるかどうかきちんと判断する必要があります。


point! 裁判所からの手紙に要注意!


弁護士が点検して、届いた手紙が「裁判所からではなかった」としましょう。

裁判所からの手紙ではないので、応答する義務はありませんし、下手な応答をするべきでもありません。

しかし、ほうっておいても、催促が何度も来るばかりです。

まず、弁護士は消滅時効にかかっていないか点検します。次に、ほかにも債務がないか尋ねます。「債務」には消費者金融からの借金のほかに、クレジットカードの支払なども含まれているので、弁護士からの質問に対しては、「借金」というより、「払わないといけないもの」という考えで、考えられる限りのものを話してください。


point! 払わなければならないものは全て弁護士に話す!


いろいろな債務と、他方で収入や資産を総合して考え、弁護士が、「これは頑張っても全額返せない。」と判断し、破産手続を検討するとしましょう(「これは頑張っても全額返せない。」と思われる事案でもほかの手続を選択することも多いですが、細かい事情はさておきここでは「破産」という手続を選択することにします。)。

破産手続を検討する上で、債務、収入、資産の額の次に検討するのは「仕方なかった。」といえるかどうかです。

借入れをした方にいろいろ言い分があることがありますが、何はともあれ、破産し、免責(「破産」しただけでは、債務は消えず、破産後に「免責」というものを裁判所が許可してくれることによってはじめて借金が消滅します。)を受けるということは借金を踏み倒すということになり、貸した人にとても迷惑がかかることになります。こうした迷惑が、貸した人にとって法律上我慢すべきものといえるかどうかを考えるのです。つまり、最終的に裁判所が免責を認めてくれそうかどうかを検討するのです。免責を受けられそうかどうかは事案により異なりますので、慎重に検討します。


point! 破産をすれば必ず借金がなくなるというわけではない!


慎重な検討の結果、免責が受けられそうであるので破産手続開始申立を行うことに決めたとしましょう。

さて、たいていはこの段階で委任契約が締結され、弁護士費用を支払う必要が生じますが、弁護士費用はどうやって工面しましょうか。多くの方に選んでいただいているのは、「積み立てる。」という方法です。弁護士が、消費者金融業者等に、「この人について債務整理をします。」という内容の手紙を送ると、たいていの場合、返済の催促が止まります。消費者金融業者にそれまで払っていたお金を当面の間、消費者金融業者に払わなくなります。そこで浮いてきたお金を弁護士費用として積み立てていただくわけです。

積み立てている間に、破産手続開始申立のために裁判所に提出する書類をそろえていきます。


point! たいていの場合、弁護士と契約すると、借金の催促が止まる!


積み立て終わっても書類がそろわないというときは、引き続き書類を集めます。

最近はペーパーレス化されていて、検針票や領収書が紙では出ないということが多いですが、プリントアウトするなどして紙として裁判所に提出することになります。現在の運用で特に問題になりやすいのが通帳のペーパーレスです。相当長期にわたる通帳の全履歴をコピーしたものを全部裁判所に提出する必要があるのですが、ペーパーレス通帳だと昔の履歴を画面に出せなかったりします。あるいは、スマホしかないから、プリントアウトできないという事態に遭遇することもあります。この場合は、銀行に、昔からの履歴が全て記載された紙を送ってもらうよう有料で依頼することになります。ペーパーレス化が進んだ社会で時代遅れのような気もしますが、裁判所が要求していることですから、従わざるを得ません。


point! 弁護士が指示した書類はすぐにもれなくそろえる!


資料集めの中で、弁護士が、債権者にも、債権の額を伺います。同時に、今までの借金と返済の履歴も開示してもらいます。(ここで、今までの借金と返済の履歴を弁護士が計算し直すと、「過払い金」というものが見つかって、業者に「返す」のではなく、業者から「もらう」べきお金が発見されることもまれにあります。最近はほとんどありませんが、「過払い金」を使うと、ほかの借金を全部返せるという場合もありました。こういう場合は、もちろん、破産手続開始申立は行わず、ほかの借金を返済して、手続終了となります。)

(「過払い金」を使っても、ほかの)借金がたくさん残り、破産やむなしと決まったとしましょう。

ここで、大きな分岐があります。裁判所が、「同時廃止」というものを認めてくれると、裁判所に払うお金が少しですみます。他方で、裁判所が「同時廃止」を認めてくれず、「管財」にしますというと、裁判所に多くのお金を払わなければいけません。

では、「管財」になったとしましょう。裁判所に納めるお金はどうやって工面しましょうか。

これも、一度に用意できない場合には、やはり「積み立て」になります。「管財」が予想される場合には、その積み立ても早い段階から行います。


point! 借金の催促が止まっても、手続には時間がかかります!


裁判所に納めるお金が用意できたので、破産手続開始申立を行い、「管財事件」として裁判所が破産手続開始決定を行ったとしましょう。

「管財事件」の場合、破産手続開始決定の時に「破産管財人」という人が選任されます。「破産管財人」は、簡単にいうと、破産手続が終了するまであなたの財産や債務を管理し、また、あなたを監督する人です。

破産手続開始決定がなされた日に、あなたは、弁護士と一緒に破産管財人の所に行って、破産管財人に引き渡すべき物一式を引き渡します。

破産手続中は、郵便物が全て破産管財人の所に転送されたり、住所を許可なく動かせなかったり、一部の資格職業に就けなくなったりするほか、裁判所や破産管財人の指示にきちんと従わなければいけません。


point! 破産手続が始まったら、裁判所と破産管財人の言うことをよく聞きましょう!


裁判所や破産管財人の指示をきちんと守って、裁判所から免責許可の決定がなされ(確定し)たら、あなたは「復権」します。法律で決められた一部の債務を除き、あなたの借金はなくなり、郵便物も自分の所に届きますし、住所も自由に移転できますし、元通りの資格職業に就くこともできるようになります。ただし、破産を二回以上することはとても困ったことですので、次は借金をしない(信用情報の関係で、しばらくは借金をしたくてもできないことが多いですが。)生活を心がけてください。


point! 免責許可決定確定により、破産手続中の制限が外れる!


これは、債務整理のごく一部の例ですが、借金の返済に困ったら、さらに安易に借金を重ねるのではなく、弁護士に依頼し、生活再建に向けて頑張りましょう。