交通事故についての豆知識

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交通事故が起こり、自分が運転していた車が破損し、また、自分がけがをし、相手方が運転していた車が破損し、また、相手もけがをし、また、その事故が相手方の一方的な過失に基づくものであるか不明である(人傷特約・車両保険、労災等は関係なし。)という想定のストーリーで豆知識を記します。交通事故事件も多様なのでいろいろなパターンが考えられますが、ここではそうした事情は抜きにして進めていきます。


交通事故が発生すると、必要に応じて後続事故を防止する措置をとった後、負傷者の救護を行うことになります。どちらが悪いかはさておき、負傷者がいる場合にはその救護に全力を尽くしましょう。仮に、負傷者が速やかに救護を受けられなかったために負傷者の症状が悪化したという場合、最終的に自分の負担が増えることがあり得ます。負傷者の救護には全力を尽くしてください。


point! 負傷者の救護と後続事故防止が最優先!


負傷者の救護がすんだら、すぐに警察を呼びましょう。場合によっては目撃していた近くの人が通報してくれているかもしれません。警察官が到着するまでの間に、可能であれば自分の車の破損状況をいろいろな角度、位置から携帯電話のカメラ機能で撮ります。道路状況を撮っても問題ないようであれば、道路状況についても撮影しておくことが望ましいです。相手方への接触は控えてください。相手方車両を撮影していたら、それをきっかけに相手方とけんかになるかもしれません。そうなっても不愉快ですので、警察官が到着するまでは、相手方と接触してはいけません。まれに、はじめから押していった方が有利だと思って、相手方に怒鳴り散らしていく方もいらっしゃるようですが、無意味です。程度によっては脅迫罪等の犯罪が成立しかねないので、警察官が到着するまでは接触しないようにしましょう。なお、御自身が加入されている自動車保険によっては、緊急時に係員が駆けつけて写真撮影をしてくれるサービスを実施していることがあります。このようなサービスがないか、いざというときのため、普段から確認しておきましょう。


point! 警察官が来るまで相手とは接触しない!現場で自分の車の破損状況を撮影する!


警察官が到着すると、現場を整理してくれるとともに、事故状況の説明を求められます。この時に、事故の正確な状況をありのまま警察官に伝えましょう。警察官は交通捜査の「プロ」です。「プロ」に嘘をついてもたいてい見破られます。それに、あなたが、「自分に有利なように」ついたつもりの嘘が必ずしも「自分に有利」とは限りません。もし、警察官からの質問に対して、記憶がはっきりしないことがあれば、「わからない。」と正確に述べるようにしてください。あなたのけがが軽微(のように警察官に見える)なら、事故現場での「実況見分」に立ち会うよう求められることがあります。「実況見分」の結果を記した書面は後に「絶対的」と言ってもよいほどの証拠となることがあるので、体調が許す限り、あなたが立ち会って、警察官の質問に答えながら実況見分に協力するべきです。実況見分の書類が正確に作成されないと、後の争いでこじれることとなったり、最終的にあなたに不利な結論になることがあります。


point! 警察官に絶対に嘘をつかない!


警察官が作成した書類は、原則として、後で見せてもらったりコピーをすることができません。何を書き取ってもらったかをしっかりと確認をして、事実と異なる部分があれば、すぐに訂正を申し立てましょう。


point! 警察官が作成する書類はしっかりと確認する!


警察官による現場における調査が一段落したら、警察官立ち会いのもと、相手方と連絡先を交換することになります。後で相手方と連絡がつかなくなったりすると困るので、住所に加えて、勤務先まで聞いておくことがベストでしょう。相手方の電話番号を聞いておくことは必須です。他人の電話番号を調べるのは簡単なことではありませんので、この時に聞いてしまわないと、電話番号がわからずじまいということになりかねません。なお、現場で警察官の面前でお互いの連絡先を交換した場合には後日警察に問い合わせても、個人情報保護の観点から、相手方の連絡先や電話番号を教えてくれることはほぼありませんので、必ずメモするようにしてください。このように、自動車運転時には、突発的にメモが必要となる事態がありますので筆記用具とメモ用紙は自動車に常備しておきましょう。最後に、自分や相手方が任意保険に加入している場合には、それぞれが加入している任意保険会社(自賠責保険会社ではありません。)を聞いておきましょう。相手方加入の任意保険会社の情報はすぐに必要になります。


point! 警察官の立会いがある場面で、相手の情報をもれなく聞き出す!


連絡先の交換が終わったら、警察官が現場にいる段階で、警察官に立ち会ってもらって、相手車の撮影を行いましょう。いろいろな角度、位置から徹底的に携帯電話のカメラ機能で撮ります。この時に、関係なさそうな部分も含めて徹底的に撮ります。


point! 警察官の立会いのもと、相手の車の破損状況を撮影する!


こうしたことが終わったら、事故があったことを自分が加入している任意保険会社に連絡します。この時に、相手方加入の任意保険会社を伝えておくと、事故発生を相手方加入の任意保険会社に伝えてくれることが多いです。

一通りの警察官立ち会いでの調査が終了して、警察官も帰られたとなったら、自分のけがの程度に応じて遅くとも翌々日までには病院に行くことになります。病院に行って、診断書をもらい、後日警察に診断書を提出しないと、警察としては「けが人なし」として扱うことになります。つまり、最悪、あなたのけががなかったこと扱いになる恐れがあるのです。けがをされたという場合は、必ず、「医師」の診察を受けてください。「医師」以外の人による見立ては意味を持ちません。「病院」、「診療所」、「クリニック」、「医院」といった単語が入っていることが、「医師」がいるかどうかの目安になります。初診に限らず、(「医師」の同意なく)「医師」以外にみてもらい、「医師」に診てもらわないということは、後の賠償請求ではとても不利になり得ます。特に、最近は、最終的に裁判所に提出することにもなる専用様式の診断書に、医師が「医業類似行為での施術には同意していない。」等の言葉を書き添えることもあり、医師以外による施術は最悪の場合完全に賠償対象から排除されかねません。医師から警察提出用の診断書をもらったら、「コピーをとって」、原本を警察に提出します。ここで、コピーをとるのを忘れると、後でその診断書の内容を知ることができなくなります(診断書を作成した「医師」に尋ねると、内容を教えてくれるかもしれませんが、ただでさえ忙しい医師に迷惑をかけるのは好ましくないでしょう。)。なお、医師からはじめにもらう警察提出用の診断書はあくまで、「初めて見た段階での所見」によるものですので、そこに記載されている治療見込期間にあまりとらわれる必要はありません。実際に治療が必要なのであれば、治療を続けるべきでしょう。


point! 遅くとも事故の翌々日までに「医師」の診察を受ける!医師の診察を受けたら、診断書を警察に提出する!


さて、あなたが行った病院の治療費は誰が払うのでしょうか。答えは「あなた」です。医師の立場からすると、「あなたに頼まれてあなたを診察した。だから、診療報酬等をあなたが払ってください。」が当然です。その場で事情を説明すると支払を待ってくれる医師もいますが、治療費等の支払を求められたら、素直に支払うべきです(領収書は必ず原本を保存してください。)。

その後、相手方加入の任意保険会社から連絡があった後は、相手方加入の任意保険会社が、本来「あなたが」医師に支払うべき治療費等をあなたに代わって払ってくれることがあります。しかし、これは「例外だ。」ということを心にとめておいてください。だから、相手方加入の任意保険会社が、あなたの方に今回の事故の責任があると考えている場合や、事故によるけがが治ったと考えた場合には、「あなたが」医師に支払うべき治療費等をあなたに代わって払ってくれないことがあります。この場合でも、医師の立場からすると、「あなたに頼まれてあなたを診察した。だから、診療報酬等をあなたが払ってください。」が当然の立場です。自分と相手方のどちらに責任があるのかは、医師には関係がないことですので、医師には、請求されたとおり、支払う必要があります。治療は受けたいけれども自由診療での全額の支払は厳しいというときは、健康保険を使うこともできます(ただし、後々必要になる書類との関係で、健康保険を使う場合は、あらかじめ、後にする自賠責の請求に必要な書類を書いていただけるか医師に確認する必要があります。なお、相手方加入の自賠責を利用した、治療費の手当の方法もありますが、これに頼らざるを得ないケースは比較的珍しいのでここでは説明を省きます。)。


point! 治療が必要なのであれば、自腹を覚悟でも治療を受ける!


さて、あなたが自腹で診療を続けている間に、壊れた自動車を修理する必要があります。壊れた自動車を修理工場に運び込み、そのことを相手方加入の任意保険会社に伝えると、相手方加入の任意保険会社から「アジャスター」といわれることが多い調査員がその工場に来て、壊れた自動車を検査し、どこが今回の事故で壊れた部分であるかを調査します。アジャスターは今回の事故を直接知っているわけではないので、アジャスターがあたりをつけていたところ以外にも、今回の事故で壊れた部分があるかもしれません。そういう漏れがないように、自動車の修理を依頼する段階で、修理工場の人に、「ここが壊れた。」ということと、「こういう形の事故であった。」ということをもれなく伝えておきましょう。修理工場の人と一緒に、車をくまなく点検するということもよいでしょう。

その後、アジャスターによる調査結果を踏まえて、相手方加入の任意保険会社から、「自動車の修理のために支払えるのはこれだけの額である。」という提示があります。その段階でもう一度修理工場に出向き、アジャスターが、今回の事故で生じたと考えた損傷がどれであるのか、修理工場の人から丁寧に聞き取りましょう。漏れがあるようなら、修理工場の人に訂正を依頼します。


point! 自分の自動車の壊れた部分は漏れなく見積もりしてもらう!


さて、相手方加入の任意保険会社から、修理費用の最終的な提示があったとして、それに対して、あなたには「この部分が漏れている」とか、あるいは「過失相殺で自分はそんなに悪くない」といった言い分があるとしましょう。

あなたとしては壊れた車を早く修理してもらいたいですよね。ここで、修理工場に修理を依頼すると、ここでも、修理工場の立場からすると「あなたに頼まれて修理をした。だから、修理代をあなたが払ってください。」が当然の立場です。修理工場に修理を依頼したら、その修理代はあなた持ちです。原則は、あなたが修理工場に、修理代全額を支払った(領収書は必ず原本を保存してください。)後に、相手方加入の任意保険会社から修理代相当額を受け取るわけです。

相手方加入の任意保険会社からあった修理費用の最終的な提示額は、物損部分の示談(「示談書」に記名押印することはもちろん、それ以外の書類に判をつくことでも示談と同等の効力を持ってしまうことがあります。書類に判をつくことには重大な効果が伴うことがありますので、十分注意してください。)が成立していないとたいていの場合全く支払われません。つまり、あなたに言い分があるなら、とりあえずあなたが修理工場に修理費用全額を支払う必要があるということです。


point! 修理代金に納得がいかないなら、安易に判をつくのではなく、一旦自腹で修理することも考える!


ここで「物損部分」という言葉が出てきたので補足説明します。交通事故による損害は大きく分けて、「物損部分」と「人損部分」にわけて処理されるのが慣行です。物損部分は文字通り、物について生じた損害、人損部分は文字通り、人について生じた損害のことです。このうち、人に生じた損害については、治療に時間がかかったりして遅れがちですので、たいていは物損部分だけ先に示談を試みるということがなされます。


point! 交通事故の賠償問題はたいていの場合、「人損部分」と「物損部分」に分けて進められる!


けがも治って治療が終了したとしましょう。今回のストーリーでは、物損部分も人損部分も示談が成立していません。

あなたが弁償してほしいのは、物損部分については、修理工場に支払った修理代のうち、相手方の責任に帰する部分、人損部分については、医師に払った治療費や、通院期間等に応じて計算される慰謝料等のうち、相手方の責任に帰する部分です。

結局、これらについて双方の見解が一致せず、示談が成立しない場合には訴訟にて裁判所にそれぞれの金額を決めていただくことになります。

訴訟では、相手方の責任に帰する部分についてきちんと全額を裁判所に認定していただく必要があります。

その訴訟の中では、今までに出てきた、「実況見分調書」や自分の車の写真、相手方の車の写真をはじめとしたいろいろな「証拠」が必要になります。

交通事故については、被害者保護の観点から、たとえば、人損部分についての示談が成立しない状態でも治療費を相手方加入の任意保険会社が支払ってくれる場合があったりという取扱いがなされているので、「賠償」の原則が見えにくくなっていますが、「賠償」の原則は「後払い」です。まずは、あなたが損害を立て替えておく必要があります(この損害の立替えによる一時的な負担を軽減するものが、人傷特約であったり、車両保険であったりするのです。)。後で損害についてきちんと払ってもらうためには、「証拠」をしっかり手元に持っておく必要があります。

だから、交通事故は発生当初から全力をもって対応する必要があるのです。


point! 事故発生当初からどのように証拠固めをしてきたかが、最後の賠償額に影響する!


なお、自分の自動車が大破した場合には、自分の自動車には車両保険がついていても安心してはいけません。自分が加入している保険会社が、大破した車を遠くに運んでしまったり、スクラップにしてしまわないうちに自分の自動車の損傷状況を詳しく撮影しておく必要があります。自動車の損傷状態の写真は、事故の程度、ひいてはけがの治療の必要性を認定する上で非常に重要な証拠となります。