弁護士前畑壮志の雑感

「ねこすけ」とその仲間たちのお話として弁護士前畑壮志の雑感を記します。あくまで雑感ですので,文献的根拠はほとんどありませんし,表明される見解が正しいかどうかも保証いたしかねます。単なる読み物としてお読みください。

ねこすけ

ねこすけと仲間たち

ねこすけは一人で法律事務所を切り盛りしている弁護士。ねこたろうたちはその友達。ねこたろうは司法試験を受けようかなとちょっぴり思っている。

裁判所って何だ

ねこたろうは,ねこすけが裁判所によく出かけているのを見ています。

ねこたろう:ねこすけは裁判所でなにしているの?

ねこすけ:許可書をもらいに行っているんだよ。

ねこたろう:許可書?弁護士の資格の許可とかかい。

ねこすけ:いやいや。弁護士としての資格については僕はもう弁護士だから裁判所にわざわざ許可をもらう必要なんかないよ。

ねこたろう:では何の許可書なの?

ねこすけ:今日もらいに行ってきたのは,タマの財産を巻き上げてもよいという許可書だよ。

ねこたろう:他猫の財産を巻き上げてもいいなんて許可があり得るのかい。そんな乱暴な書面を国の機関である裁判所が発行してくれるはずがないじゃないか。

ねこすけ:信じてもらえないなら,しかたがないね。ちょっとマスキングテープを貼るから待ってね。ちょっきんちょっきんぺたぺた。はいこれ。

ねこたろう:なになに,「判決」?許可書じゃないじゃん。

ねこすけ:タイトルは「許可書」じゃなくて「判決」だけど,そこは気にしないで。

ねこたろう:主文 タマは,■■に対して5万円を支払え。この判決は仮に執行することができる。巻き上げてもいいなんて物騒な文言はないよ。

ねこすけ:「執行」に気づかないかい。

ねこたろう:「仮に」だけれども,確かに「執行」の文字はあるね。

ねこすけ:「執行」ってどういうことかわかる?

ねこたろう:判決をタマの家にもっていって,タマの家の中にある財産を手当たり次第持って帰ってくることかな。

ねこすけ:もしそれを■■さんが直接やったら泥棒,下手をしたら強盗だね。

ねこたろう:話が回りくどいなあ。

ねこすけ:実際,タマの家の中にある財産を持って帰ってくるのは執行官という猫なんだ。判決は,タマの家にある物をとってきて競売にかけて5万円を■■さんに渡してくださいと,執行官に■■さんが頼んでもよいという許可証なんだ。

ねこたろう:仮に,許可証,つまり判決がなくて,執行官に,タマの家にある物をとってきて売ってくださいと言ったらどうなるの。

ねこすけ:許可書,つまり判決がないからそんなことはできないと言われちゃうね。

ねこたろう:最終的に乱暴なことをするのは執行官という国家機関だけれども,その執行官に,乱暴なお願い事をしてもよいという許可書が判決だということだね。

ねこすけ:物わかりがいいじゃないか。

ねこたろう:土地を取り上げて売り払ってほしい場合はどうするんだい。

ねこすけ:裁判所に差し押さえの申立てをするんだ。

ねこたろう:急に穏便になったね。執行官という乱暴そうな名前の人も出てこないし。

ねこすけ:穏便じゃないよ。自分が登記を持っている土地をむりやり他人名義にされてしまうんだからとんでもない被害だよ。登記は書類仕事だから,現場仕事が得意な執行官に代わって,書類仕事が得意な裁判所が主に仕事をするけれどね。

ねこたろう:もしかして,裁判所って2種類ある?

ねこすけ:おやおや。察しがついてきたね。

ねこたろう:執行官も含めて,実力行使裁判所と許可書発行裁判所の2種類だよね。

ねこすけ:そういうこと。この2つとも「裁判所」の仕事と考えがちだけど,僕は「実力行使裁判所」の仕事をするのは「裁判所」でなくてもよいと思っているよ。

判決って何だ

ねこたろう:判決が,許可書発行裁判所がくれる許可証だということはわかったんだけれども,ふつう,許可証をもらう時は申請書とかそういうのを出してもらえるものだよね。判決の申請書ってあるの?

ねこすけ:判決の申請書のことを「訴状」と呼ぶんだ。

ねこたろう:で,申請つまり,訴状を出してから許可つまり,判決がもらえるまでどれくらいかかるんだい。

ねこすけ:場合によりまちまちだけど,2か月でもらえることもあれば,3年かかってもまだもらえないようなこともあるよ。

ねこたろう:許可書1つもらうのに3年かかるなんてどうしてそんなに時間がかかるんだい。

ねこすけ:許可書を出してよいかどうかがとても難しくて裁判所が判断に困っているからだよ。

ねこたろう:もしかして,判断に困っている裁判所にちょっかいをかけて少しでも自分側に有利にしようとするのが弁護士の仕事?

ねこすけ:察しがいいね。そういうこと。物事にはいろいろな見方があるから,こういう見方もありますよということを適切に裁判所に情報提供をすることが,最終的に判決を頂く場面で弁護士に求められている役割なんだ。法律に関係のないことや法律上道理が通らないことをいくら言っても裁判所には全然説得的じゃないからね。

ねこたろう:そうしていろいろな情報を元に最終的に裁判所が判断して出してくれる許可書が判決というわけだね。

ねこすけ:そういうこと。次の仕事があるから今日はもう帰ること。